ベトナム法人設立
はじめに
ベトナムの会社の形態
有限会社
ベトナムにおいて最も一般的な会社の形態は有限会社です。ベトナムの有限会社は、日本における「合同会社」やアメリカにおける「LLC」と類似しています。ベトナムでは、出資者が 1 人の場合は「一人有限会社」、2人以上50人未満の場合は「二人以上有限会社」と称されます。
日本人(企業)が、ベトナム人(企業)と合弁会社を設立する場合、出資者は日本人(企業)とベトナム人(企業)の二人以上となりますので、「二人以上有限会社」となります。日本人(企業)が単独で出資者となり会社を設立する場合には、「一人有限責任会社」になります。
株式会社
日本人や日本企業が、ベトナムの株式会社を設立することは可能です。しかし、ベトナムにおいて「株式会社」を設立するための要件は多く複雑で、多大な時間と費用がかかってしまいます。それ故、ベトナムに進出している日本企業の8割以上は、現地法人として有限会社を設立しています。
ベトナムの会社設立手続き
IRC & ERC
ERC = 企業登録証明書
日本人または日本企業が、ベトナムで会社を設立するためには、一般的に、まずは投資登録証明書(IRC)を取得して、その次に企業登録証明書(ERC)を取得する必要があります。
IRCの詳細につきましては、「ベトナム進出」をご参照ください。
IRCを取得することができましたら、ベトナム法人の設立手続きを行うことが可能になります。設立手続きは、企業登録証明書(ERC)の発給申請手続きです。
ERCの発給申請手続き
企業登録申請書に必要書類を添付して、ERCの発給申請をします。
設立する会社の形態によって異なりますが、一般的な有限責任会社の場合は、計画投資局(Development of Planning and Investment – DPI)の企業登録室が申請先です。
- 企業登録申請書
- 現地法人の定款
- 社員一覧(有限会社の場合)・株主一覧(株式会社の場合)
- 代表者のパスポートの公証写し(社員・株主が個人の場合)、現在事項全部証明書の公証写しおよび委任代表者のパスポートの公証写し・委任状(株主が組織の場合)
- 投資登録証明書(IRC)の公証写し
- 現地法人の社名及び所在地事業内容
- 定款資本金、株主総数、株種、株の単価(株式会社の場合)
- 会社の所有者・社員(有限会社の場合)・株主(株式会社の場合)の氏名、住所、国籍等、及び各自の出資分(有限会社の場合)・株数、株種、株の単価(株式会社の場合)
- 社員/株主の権利および義務
- 管理組織の構造
- 企業の法的代表者の人数、職位、権限および義務
- 意思決定の承認手続きおよび社内紛争の解決方法
- 管理人および監査役員に対する給料や報酬、賞与の計算根拠・方法
- 出資分の買い戻し方法
- 配当および損失負担に関する規定
- 解散手続および清算手続に関する規定
- 定款の修正・補則手続きに関する規定
ベトナムの法令上、資本金は自由に設定することが認められていますが、不動産業、保険事業、銀行事業、証券事業、金融サービス事業等を営む場合には、最低資本金が定められています。
しかし、実際には、上記以外の業種でも当局から事業規模に見合った資本金額を求められることがありますので、相当金額の資本金を設定するのが良策です。
ベトナムにおける会社の代表取締役は、「法定代表者」と称されます。そして、ベトナム法人の法定代表者の少なくとも1人はベトナムに居住することが義務付けられています。
証券、保険、銀行、ファイナンス、法律、教育、トレーニング、観光などの条件付き投資分野の事業を行う場合、専門的な法令(クレジット組織法、証券法、保険経営法、弁護士法等)に基づく設立手続きが必要になります。さらに、有資格者の雇用が必要となる場合もあります。
企業登録証明書(ERC)に記載される企業登録番号が税コードおよび社会保険コードになります。
会社設立後の手続き
ERCが発給されましたら、ベトナムで会社が設立されたことになります。その後、事業活動を実施するためには、次の手続きを行う必要があります。
企業登録証明書(ERC)の発給後、設立された会社は、自身の印鑑を作成・保管・管理しなければなりません。印鑑の形式や種類は会社が決定することが可能です。
設立された会社は、国家企業登録情報ウェブサイトへ掲載するため、会社の所在地の計画投資局の経営登録室に、下記の情報を提供しなければなりません。
- 企業登録証明書(ERC)の内容(企業名、企業番号、住所、法的代表者に関する情報、資本金、投資家に関する情報)
- 事業内容
- 株主一覧(株式会社の場合)
設立された会社は、資本金の振り込み、国内外からの借り入れおよび支払い等のため、ベトナム国内の銀行に口座を開設しなければなりません。口座を開設する銀行は、会社が自由に選択することが可能です。
設立された会社の事業分野によって、事業ライセンスの取得が必要となる場合があります。事業ライセンスの取得手続きは、各分野の法令により規定されています。
- レストラン事業: 食品安全条件充足施設の証明書
- 教育事業: 設立許可書、教育活動許可書
- 人材派遣業: 人材派遣活動許可書
- 人材紹介: 人材紹介サービス許可書
- 建設業: 建設活動能力証明書など
設立された会社は、税務機関からVATインボイスフォームの承認を受けなければなりません。その後、特例で認められている場合を除き、全ての企業はVATインボイスを自身で印刷し、商品やサービスを売買する際には、電子VATインボイスを使用しなければなりません。
会社は設立後、会社設立年の翌年あるいは経営活動開始年の遅くとも1月30日までにライセンスフィー(事業税)の申告・納付を実施しなければなりません。税額は資本金によって異なります。
設立された会社が、日本人のような外国人を採用する場合、採用予定日の少なくとも 30 日前までに、会社所在地の労働傷病兵社会問題局、または工業団地・輸出加工区・ハイテクパーク・経済特区の管理委員会に対して、外国人の雇用が必要である旨を説明する報告書(職位、専門職名、人数、労働期間、雇用理由などの情報を含む)を提出しなければなりません。
その報告書が承認された場合、会社は、外国人の勤務開始予定日の15 日前までに、管轄する市・省の労働傷病兵社会問題局、または工業団地・輸出加工区・ハイテクパーク・経済特区の管理委員会に対して、労働許可証=Work Permit(WP)の発給申請書を提出する必要があります。
設立された会社が、日本人のような外国人を雇用する場合、会社は外国人の被雇用者がベトナムへ入国する前に、公安省の出入国管理局において「ビザ発給許可通知書(招聘状) 」の申請を行います。ビザ発給許可番号を取得できましたら、雇用される外国人は、外国のベトナム大使館または領事館において商用ビザを取得することができるようになります。
その後、被雇用者は商用ビザでベトナムに入国して、労働許可書(WP)を取得した後、公安省の出入国管理局、または中央直轄市・ 省の公安出入国管理室にて、就労ビザ、または一時滞在許可証(テンポラリー・レジデンス・カード=TRC) の発給申請を行うことができます。労働許可書(WP)が 1 年以下の外国人の場合、一時滞在許可証(TRC)は発給されませんので、就労ビザ(通常 1 年)の発給申請を行うことになります。なお、一時滞在許可証(TRC)を取得しますと、ベトナムに居住していない場合でも、ベトナムで個人所得税の申告をしなければならなくなります。
設立された会社は、労働契約の給料交渉および給料支払い等の根拠とするため、賃金テーブルを作成しなければなりません。賃金テーブルを作成するにあたり、会社は社内の労働者組織より意見を聴取し、実施前に社内に公開しなければなりません。もし社内に労働者組織がない場合には、被雇用者全員の意見を聴取し、被雇用者との協議に基づく賃金テーブルを作成することが可能です。
ベトナムにおける強制保険とは、社会保険、健康保険、失業保険の 3 種類です。なお、3ヶ月未満の雇用契約による被雇用者は、健康保険と失業保険の加入は任意ですが、試用契約中の契約を除き、社会保険の加入は義務付けられています。
設立された会社が10 人未満を雇用する場合には、就業規則を公布する必要はありませんが、会社と各従業員間の雇用契約において、労働規律および物質的責任について合意しなければなりません。
設立された会社が10 人以上を雇用する場合には、会社は就業規則を文書で作成しなければなりません。そして、会社が就業規則を公布する前には、社内の労働者組織の意見を聴取しなければなりません。公布から 10 日以内に、会社は労働傷病兵社会問題局または工業団地・輸出加工区・ハイテクパーク・経済特区の管理委員会に対して、就業規則を登録する義務があります。
労働協約とは、団体交渉を経て締結された合意書を意味します。労働協約は、会社の半数以上の労働者が賛成した場合に限り締結されます。
会社が労働協約を締結した場合、会社はその締結日から 10 日以内に、省レベルの人民委員会傘下の労働機関、または工業団地・輸出加工区・ハイテクパーク・経済特区の管理委員会に対して 、その労働協約を1 部送付しなければなりません。
なお、労働組合を設立した場合、地域によっては労働協約を作成しなければならない場合があります。
設立された会社は、以下のうち必要な手続きを行わなければなりません。
- 建設許可証の取得
- 戦略的環境評価の実施
- 環境作用評価報告書の審査・承認
- 環境許可書の取得
- 環境登録
- 消火消防設計の承認
- 自然災害基金への対応
会社は、会計責任者を任命し、その任命日から10日以内に、当該会計責任者の情報を計画投資局の経営登録室へ文書で通知しなければなりません。
なお、会社の設立日から12カ月以内は、会計責任者を任命する義務はありませんが、それ以降は、会計責任者を自社の社員として採用するか、社外に委託する必要があります。
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